ピッチャー・キラー
後編
そんなこんなで(どんななんだ)計4校分、びっしりつまった美形ピッチャーずの中。
天国は思考することを放棄しつつあった。
その時。
「弱小高同士が群れてるんじゃねーよ。
とっとと猿野放せば?」
クールに癇に障ることを言ったのは、華武高校3年、帥仙だった。
「なんだと?」
目の前の雛壇との言い合いの中、しっかりと悪口を聞き取ったのは今だ天国をしっかり抱きしめていた犬飼だった。
ついでに腕の中の天国も、帥仙の声は聞き捨てならなかったらしく、自前の腕力で犬飼を振りほどくと帥仙の前に寄っていった。
「てめえ、今弱小校とか抜かしやがったな!
今日の試合見てから言いやがれ!」
まっすぐに自分に視線を向け声を荒げる猿野だったが、帥仙は、してやったりと微笑む。
「ひっかかったな、猿野。」
そう言うと、今度は帥仙が腕を伸ばし天国を抱きしめ…ようとしたのだが。
「「ふざけるな!!」」
とここで二人の男が帥仙の後頭部を拳で打撃する。
同校3年、屑桐と十二支3年、一宮だった。
屑桐は言うに及ばないが一宮とて並の腕以上の優秀なピッチャーである。
その二人の肩と腕を存分に生かした拳を受けた帥仙刃六。
当然のごとく意識を失うのであった。
「い…一宮先輩…?」
最も一宮の至近距離に居た子津は、普段こういったことにあまり手出ししない一宮の行動に驚く。
「ふ、ふん。」
その視線に、少し恥ずかしかったのか一宮は視線を逸らす。
その時、天国が一宮に尊敬のまなざしを向けた。
「い…一宮先輩〜〜〜!!」
天国は十二支への暴言に対して一宮が鉄槌をくだしたのだと思い、感動したようだ。
「すっげーかっこよかったっすよ!!
やっぱ十二支をバカにした奴はこうしなくっちゃいけませんよね!」
「あ…ああ。」
どうやら一宮は思わぬ役得を得たようであった。
が、同時に帥仙を撃退したのに無視された屑桐は、いい気分なわけはない。
「猿ガキ…オレを視線の外にはずすとはいい度胸だな。」
「は?!」
不機嫌そのものの声を発せられた天国は、今度は屑桐のところに行く。
「そういやなんでアンタがこの人殴ったわけ?
仲間じゃねえの?」
そう言って疑いのまなざしを向けてくる。
「そ…それは、な。」
帥仙が天国を抱きしめようとしていたのを阻止した、という事を屑桐は言いよどんでしまう。
天国に関しては頭より先に身体が動いてしまう。
そんな自分を説明するのは、流石に埼玉県最強のピッチャーと言えど精神的に抵抗がある。
むしろ、高いプライドがかえって邪魔をするとも言える。
「猿、いい加減そいつから離れろ。」
突然背後から天国の腕を掴み引き寄せたのは、犬飼だった。
先程まで自分の傍にいたのに、何か騒動が起こればあちらこちらに惜しげもなく顔を出す天国に、
やきもきしていたようだ。
だが、屑桐もやっと思い人が自分に意識を向けてくれたのを邪魔されるのは腹立たしい。
「フン…あの程度のカットファストボールしか投げられん投手が偉そうなことだな。」
「なっ…!!」
さすが屑桐、同じ投手を挑発するのはお手の物のようだ。
「オレの球はあれだけじゃねえ…。」
「ほう?ではそれを何故見せなかった?」
「てめえらに全部見せるほどお人よしじゃねえ!!」
「苦しい言い訳だな。」
「ね〜〜てんごくく〜〜ん、ヘタレな二人はほっといてさ、オレのとこおいでよ〜〜。」
緩んだ言葉と力強い腕で天国を背中から抱きしめてくる男が現れた。
今度はセブンブリッジ学院3年鳥居剣菱だった。
「け、剣菱さん?!」
天国の声にいがみ合っていた二人は意識を天国のほうに戻す。
「貴様、横取りとは新参者に似合って小ざかしい事だな。」
「な〜〜に言ってるかなあ、同学年のくせにさ〜〜。
大体オレもう18だよ〜〜?君はまだ17っしょ〜〜。」←鳥居剣菱 6月30日生まれ
「う…。」←屑桐無涯 12月29日生まれ
大人なつもりのハイティーン(死語)二人組みが不毛な争いをしている中。
犬飼は剣菱の腕にまだいる天国に言った。
「猿!何大人しくしてやがる、とっとと振りほどけ!」
さっきは自分を振りほどいたのに、と嫉妬もまじって怒り出す。
しかし、それはなかなか出来なかった。
「う、うるせーっこの人の筋力半端じゃねーんだよ!!」
そう、少し気を逸らしたくらいでは簡単に振りほどけないほどの集中力と筋力をもって
剣菱は天国を抱きしめていたのである。
その時。
「手を貸そう。」
屑桐のほうをむいている剣菱の逆方向から、別の腕が出てきた。
「あ、アンタ…!」
そこにいたのは今日の対戦相手。
黒撰高校3年、村中魁だった。
彼もかなりの筋力を誇っていた。
ので。
天国の力と合わせ、剣菱の腕を解いた。
「わ!!」
解いてからやっと村中が居た事に気づく剣菱。
「貴様は…。」
「久しいな、二方。
嫌がる者を捕らえて喧騒とは品が無いのではあるまいか?」
二人にはあまり無い「他人に敬意を払う」という性格の持ち主である村中の言葉は。
今までで最も常識的な意見が含まれていた。
が、だからといって素直に受け入れるような男子高校生はこの場に存在しなかった。
「フン…。去年準決勝止まりの分際でえらそうな事だ。」
「今この場で野球の実力は関係あるまい。人としてどうかと申しているのだ。
我々は高校球児であり、それはつまり社会においては一介の高校生でしかないということだ。」
「……。」
その程度のこと、屑桐や剣菱に分からないわけはなかった。
ただ、この場で天国を前にすると…どうしても、子どものような意地を張らないではいられなかったのだ。
かといって、引き下がる事も出来ない。
理性を引き裂くほどの感情を、猿野天国という存在はどうしようもなく荒立たせるのだから。
「それは、分かっている…。」
「うん、分かってるんだけどね〜〜〜。」
「だからって…引けねえんだよ。」
「んだ。そう簡単に迷惑かかるだっつって遠慮なんてできねえだ。」
「…誰も諦められんとなると…。」
「仕方ねえよ。俺たちは、結局まだまだガキなんだから。」
「な、猿…の?」
##################
「ここまで来れば大丈夫っすね。」
皆が村中の言葉に真面目に自分を見つめなおした一瞬、
子津は天国を連れてその場を離れたのだ。
「ん。サンキュな。」
「さ、早くベンチに戻るっすよ。」
(申し訳ないっすけど、猿野くんもいないしすぐに冷静になってくれるっすよ。)
そう思い、子津はベンチへと向かった。
多くの人間が、天国に対して失礼でも「自分が」どうしたいか考えた一瞬。
あの場で、ただ一人。
天国がどうしたいか、その為に自分がどうするべきなのか。
そう考えたものだけが。
最上級の賞品を手に入れることとなる。
これは、そんな恋のゲーム。
end
珊瑚姫様
大変遅くなって申し訳ありませんでした!やっとお届けできました、後編です。
なんというかやっぱり収拾つかず…。わけの分からないしまりになっちまいましたよ。
争奪戦モノってやっぱり難しいです。
これ結局見た目的には漁夫の利なんですけど、でもやっぱり天国のことを一番に考えてくれるのは
子津くんかな、と思ってこういう結果になりました。
まとまりは皆無です!
遅くなりまくった上にこんなんで本当に申し訳ありません!!
でもいがみあい書いてて楽しかったです!!
素敵リクエスト本当に有難うございました〜〜!!
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珊瑚姫様
大変遅くなって申し訳ありませんでした!やっとお届けできました、後編です。
なんというかやっぱり収拾つかず…。わけの分からないしまりになっちまいましたよ。
争奪戦モノってやっぱり難しいです。
これ結局見た目的には漁夫の利なんですけど、でもやっぱり天国のことを一番に考えてくれるのは
子津くんかな、と思ってこういう結果になりました。
まとまりは皆無です!
遅くなりまくった上にこんなんで本当に申し訳ありません!!
でもいがみあい書いてて楽しかったです!!
素敵リクエスト本当に有難うございました〜〜!!
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